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溶融亜鉛めっきFAQ

37.溶融亜鉛めっきと有機系ジンクリッチペイントはどちらが優れているの?開く

溶融亜鉛めっきと有機系ジンクリッチペイントには、それぞれの長所があり、その防食機能も異なっています。
従って、一律に同じ耐食試験を行って、どちらが優れているといった比較は意味がありません。

はじめに

昨今、「常温亜鉛めっき」と称してあたかも溶融亜鉛めっきと同じ、あるいは溶融亜鉛めっきより優れているといったユーザーに誤解を与えるような説明をしている有機系ジンクリッチペイントのメーカーもありますが、基本的に溶融亜鉛めっきと塗装は全く異なるものであり、その特性も大きく異なっています。

対象となる鉄鋼製品の使用環境を勘案した上で、溶融亜鉛めっきと有機系ジンクリッチペイントのそれぞれの長所を生かすような、言い換えれば「使い分け(棲み分け)」を行った選択が重要です。

溶融亜鉛めっきとは

溶融した亜鉛浴に鋼材を浸漬し、めっきを施す加工方法です。塗装や電気めっきと異なり、鋼と亜鉛は合金化反応で密着し、優れた密着性能を有しています。亜鉛めっき皮膜は、薄い緻密な酸化被膜で覆われて優れた防食作用があります。

また、亜鉛は鉄に比べて電気的に卑なる金属(イオン化傾向:Zn>Fe)であり、腐食環境下では鉄が錆びる替わりに亜鉛が腐食され鉄を錆から守る犠牲防食作用があります。

有機系ジンクリッチペイントとは

有機系樹脂をバインダーとして亜鉛末を主体に調合した塗料です。鋼の防食に有効で直塗り塗装以外に溶融亜鉛めっきの補修剤としても利用されています。溶融亜鉛めっきと異なり、いわゆる塗装を施す方法なので、しっかりした下地処理と塗装条件の管理を行わないと密着性に問題を生じます。

色々なメーカーから数多くの商品が販売されていますが、その性能は使用している原材料で左右されます。

  1. バインダー(樹脂)
    アクリル樹脂、エポキシエステル樹脂、スチレン樹脂等、メーカーによって異なり、耐候性、耐摩耗性、密着性など注意が必要です。
  2. 亜鉛末
    使用される亜鉛末の違いによって、塗料としての防食作用に影響があります。

溶融亜鉛めっきとの相対比較一覧表(相対比較:◎適 ⇔ ×不適)

項目特性・項目溶融亜鉛めっきジンクリッチペイント塗装
防食機能海水/海塩粒子×~△
きず(5mm以下)の防食△~◎
幅5mm以下の不めっき、きずであれば犠牲保護作用の効果がある
×~△
きず部の犠牲防食作用はあまり期待できない
太陽光△~○
風雨
荷扱い耐きず性×
耐摩耗性×~△
加工・施工下地処理(ブラスト処理等)めっき工場にて酸洗~めっきの連続加工下地処理後素材表面が酸化しないうちに塗装
表面処理条件設定塗装条件設定必要
(吐出量、速度、距離等)
膜厚規定JIS H8641で規定なし
目標の膜厚確保は複数回の重ね塗り必要
めっき面又は塗膜補修不めっき又は 塗り残し・きずタッチアップ等タッチアップ等