- 34.亜鉛めっき鋼材とコンクリートの密着性は?開く
コンクリート中に埋設された亜鉛めっき鋼材とコンクリートとの密着性についてはこれまでにもいくつかの報告がありますが、亜鉛めっき鉄筋とコンクリートとの密着性に関するものが主で、形鋼など一般鋼材に関しては極めて限られたものしか見当りませんでした。
最近日本鉱業協会発行の「鉛と亜鉛」誌(2003年1月号)にH形鋼などとコンクリートとの付着特性に関する研究報告が掲載されましたので、以下に概要を記します。
「溶融亜鉛めっきとコンクリートの付着特性について」1)
1.実験方法
(1)試料
1)埋設用試験片
無めっき鋼材及び亜鉛めっきした鋼材について下記寸法、形状の試験片を使用
引抜試験用 平鋼 (SS400 50mm×4.5mm) 等辺山形鋼 (SS400 50mm×50mm×4mm) H形鋼 (SS400 100mm×100mm×6mm×8mm) 割裂引張試験用 平鋼板 (SS400 30mm×4.5mm) 2) コンクリート供試体
引抜試験用供試体 300mm×300mm×300mmの立方体に上記形鋼を埋設 割裂引張試験用供試体 JIS A 1132 による圧縮強度試験用供試体に上記平鋼板を割裂面にそって埋設 試験材令 28日、91日 3) コンクリートの品質
JIS A 5308に規定された生コンクリートを使用
スランプ 9.5cm
圧縮強度‥‥現場空中養生 19.5N/mm2(28d)、25.5N/mm2(91d)2.実験結果
(1)引抜試験
各供試体について引張試験を行い、最大付着強度(付着強度 – すべり曲線の勾配が急変する点の強度)を試験片の面積(試験片のコンクリート埋設面積)当りに換算したものが次の図です。
引抜試験結果
FB-N:平鋼板(無処理) FB-Zn:平鋼板(亜鉛めっき) L-N:等辺山形鋼(無処理) L-Zn:等辺山形鋼(亜鉛めっき) H-N:H形鋼(無処理) H-N:H形鋼(亜鉛めっき) 図で見る通り、平鋼板及び等辺山形鋼については亜鉛めっき鋼の付着強度が大きいことがわかります。H形鋼についてはその差は明確ではありませんでした。この理由としては、H形鋼のような形状の複雑な試料では、試料とコンクリーとのつき回りのバラツキなどの変動要因が影響したと考えられます。
(2)割裂引張強度試験
圧縮強度試験用コンクリートに平鋼板を埋設した供試体について、割裂引張強度試験を行いました。平鋼板を埋設していない場合と比較して割裂引張強度は低下しますが、その低下率が小さい試料ほどコンクリートへの付着力が大きいと考えられます。次の図は材令28日および91日の試料について試験した結果です。
割裂引張試験結果
材令28日、91日のいずれについても亜鉛めっき鋼材の方が引張強度が高くなっています。このことから相対的ではありますが、付着強度としては亜鉛めっき鋼材の方が高いといえます。
なお、割裂面の状態が上図右下の写真で観察されますが、無処理鋼材と接していたコンクリート面はほぼコンクリートのままの外観、亜鉛めっきと接していた面は表面が変色していることがわかります。
X線回折の結果によると、この部分にはCaZn2(OH)6・2H2O成分が認められました。この成分はコンクリート中における亜鉛めっき材料の耐食性を向上させる一つの生成物としてすでに報告されていますが2-5)、コンクリートとの付着強度にプラスの影響を与えている可能性も考えられます。3.参考文献
- 村上和美、兼松秀行、市野良一、沖 猛雄;鉛と亜鉛 Vol.40, No1, p38-43(2003)
- T.Oki; 5 th Asia-Paciffic General Galvanizing Conference Abstracts(Busan), p20-p31(2001)
- K.Murakami; 5 th Asia-Paciffic General Galvanizing Conference Abstracts(Busan),p209-p221
- 沖 猛雄; 鉛と亜鉛,Vol39, No.2, p2-p9 (2002)
- 村上和美, 兼松秀行, 市野良一, 沖 猛雄;鉛と亜鉛, Vol39, No4, p6-p11(2002)