- 2.亜鉛めっきの環境別耐用年数は?開く
亜鉛鍍金の環境別耐用年数はおおよそ次のようになります。
1.大気中
大気中の耐用年数については、使用環境による亜鉛の腐食速度と、亜鉛の付着量から次の式のように計算できます。
耐用年数=亜鉛付着量(g/m2)÷ 腐食速度(g/m2年)× 0.9
日本における使用環境別の亜鉛の平均腐食速度と耐用年数は下表の通りであり、これをもとに使用環境別耐用年数をグラフ化して見ましょう
暴露試験地域 平均腐食速度(g/m2/年) 耐用年数(年) 都市・工業地帯 8.0 62 田園地帯 4.4 113 海岸地帯 19.6 25 2.水中
溶融亜鉛めっきは、水中でもめっき表面に保護皮膜が形成され、すぐれた耐食性を示します。
水中の耐食性はpHと温度が支配的な影響を与えます。亜鉛は両性金属であるため強酸、強アルカリの水溶液には急激に溶解します。このため亜鉛めっきが有効な耐食性を示すのは、pH6~12.5の範囲です(下左図)。
水温も亜鉛めっき鋼の腐食速度に重要な影響をあたえます。下右図によると、腐食速度は水温が150゜F(65℃)に達した時最高となり、それ以上の温度では急激に減少することがわかります。なお、この実験は純度99.9%の亜鉛を、蒸留水中で空気を通しながら15日間浸せきし、その間56回転/分で回転させ、かつ空気吹き込みをしながら行っています(炭酸ガスは除去せず)。含有塩類も多少の影響を及ぼし、軟水中よりもカルシウム塩類を含有する硬水中の方が耐食性が良好です。水中に溶存している炭酸ガスの影響もありますが、腐食速度は30~100g/m2/年です。
3.海水中
海水中での腐食速度は100~200g/m2/年程度と思われます。しかし海水に浸せき後1年以上になると腐食生成物のために腐食速度は半減するようです。
逆に干満帯およびしぶきのかかるスプラッシュ・ゾーンでは、1000g/m2/年程度になることもあります。
また、海水中では同濃度の食塩水より耐食性が良好です。これは海水中のマグネシウム塩類が腐食抑制作用を有するからだと報告されています。4.臨海地域における耐食性
臨海地域では海岸に近づくにつれて海塩粒子濃度が高くなったり、洋上などで海水飛沫がかかったり、また満潮時や波の高い日に直接海水の影響を受ける場所まであります。
亜鉛の腐食は海塩粒子濃度、風向、湿度などに影響されますが、一般的傾向としては海に近いほど大きくなります。我が国の臨海地域での溶融亜鉛めっきの腐食速度(暴露期間:3ヵ年)
暴露場所 腐食速度(g/m2/年) 備 考 伊良湖岬測候所 13 渥美湾より1km 北陸自動車道鯨波橋 20 海岸から200m 三宅島 40 海岸から100m 静岡県大井川沖 20 海上14km
ただし暴露期間2年2ヶ月臨海地域での腐食傾向としては、腐食速度が径年的に大きく低下することが特徴です。
5.コンクリート中の耐食性
コンクリート中の亜鉛めっき鉄筋の耐食性に最も大きい影響を与える要因は、塩分含有量であります。
標準的な品質のコンクリート中では、少量の塩分が混入または侵入しても、亜鉛皮膜は優れた耐食性を示しますが、塩分がある限度を超えると亜鉛皮膜に孔食を生じ、長期の耐食寿命が期待できなくなります。
発表されている亜鉛めっき鉄筋コンクリートの暴露試験報告書より亜鉛皮膜が異常腐食を起こす塩分濃度を推定しますと概略下表のようになります。亜鉛めっき鉄筋、通常鉄筋の使用可能な塩分含有量限界値
(塩分含有%はコンクリートに対するNaCl換算質量%)鉄筋の種類 不動態領域 使用可能な低腐食領域 溶融亜鉛めっき鉄筋 0.1%以下 0.3%以下 通常の鉄筋 0.014%以下 0.034%以下
通常鉄筋での不動態領域の塩分%は、細骨材中の塩分許容量0.04%、また低腐食領域は0.1%からコンクリート中の量に換算した。この表より、通常鉄筋の場合はコンクリート中の塩分濃度が0.034%を超えると鉄筋が発錆し、コンクリートがひび割れ、崩落を起こす可能性が増大しますが、溶融亜鉛めっきでは0.3%程度までは劣化原因を生じる恐れはありません。
実際のコンクリート構造物の塩分含有量は、海岸近くの構造物で飛散する海水飛沫にさらされる頻度の高い場所では1%を超すものがあります。しかし直接海水飛沫を受けない場所では、特異地形を除き、かぶり40mm程度付近では長期供用後も0.3%を超さないようであります。このようなデータを参考にし、かなり安全サイドを考えても、海岸線より100m程度以上離れた場所であれば、通常品質のコンクリート構造物で、かぶり40mmでの亜鉛めっき鉄筋は長期に腐食を生じることはありません。※岸谷孝一、樫野紀元:亜鉛メッキした鉄筋を用いた鉄筋コンクリートの自然暴露試験 日本建築学会関東支部 昭和60年度