- 12.ボルト継手部の設計は?開く
普通ボルトを用いる場合は一般の継手部と全く同じ設計を行います。
溶融亜鉛めっき高力ボルトを摩擦接合で用いる場合には、建築基準法に基づいた建設大臣の特認が必要です。ただし、接合面の処理、高力ボルトの締付け等の施工管理面で、一定の条件を備えれば、そのメーカーのボルトに限り個別の大臣認可を必要とせずに使用できることとなっており、現在9社のボルトメーカーがこの一般認定の資格を取得しております。つぎに主な設計条件について述べます。
(1) 添接面の処理
溶融亜鉛めっき処理した鋼材をそのままの状態ですべり試験を行うと、すべり係数は0.15~0.35、平均0.22程度の値しか得られません。そこでめっき表面に様々な処理をしてすべり係数を大きくする方法がとられます。通常はブラスト処理により表面粗度を50S以上として0.4以上のすべり係数を確保していますが、この方法は特別な設備を必要とすること、環境上粉じん対策が必要となること、コストと納期の点で不利であることなどから、最近ではりん酸亜鉛処理などの化学的方法が注目を浴びています。この方法は、添接面にりん酸亜鉛の微細な結晶皮膜を化学的に析出させるもので、作業性がよく、亜鉛めっき面の損傷もなく耐食性が確保されること、環境上特殊な配慮も不要であることなどの理由から、主として建築分野で多く採用されるようになっています。
(2) リラクゼーション
高力ボルトで接合部を締付けておくと、時間の経過と共に高力ボルトの導入軸力が徐々に減少していく現象です。溶融亜鉛めっき接合部では、一般の鋼材の接合部に比べ2~3倍程度大きな軸力減少が生じますが、これは締付け直後が最も大きく、時間の経過と共に小さくなります。従って、一般には初期導入軸力の20%程度の軸力減少を想定しておけばよいと考えられています。
(3) ボルト締付け法
高力ボルトの締付けには、トルクコントロール法とナット回転法がありますが、トルク係数値が必ずしも安定していませんので、締付けボルトの軸力がトルク係数値にあまり影響されないナット回転法による二度締めが適当です。
なお、高力ボルトのセットは、ボルトはF8T、ナットはF10T、座金はF35Tとしており、その他ボルトの長さ、穴径、施工方法などが規定されています。