FAQ

溶融亜鉛めっきFAQ

10.めっき構造物の設計上注意する点は?開く

被めっき材の製作上注意すべき事項は次の通りです。

1.部材の寸法、重量

めっき可能な製品の大きさ、重量は、めっき槽の大きさと工場設備(搬送能力)によって決まりますから、めっきする製品の設計段階であらかじめ、めっき工場の可能寸法を把握しておくことが重要です。製品の寸法がめっき槽の寸法よりも大きい場合は2度浸けの方法をとりますが、仕上がり品質の面からはあまりおすすめできません。

2.素材の材質

鋼材の材質によって、めっき層の厚み、外観(やけ)、性質(密着性)などに異常をききたすことがあります。
鋼材の成分の中で、鉄 – 亜鉛反応にいちじるしく影響を及ぼすのはケイ素です。0.05%以下および0.15 – 0.25%の間以外のケイ素範囲では、鉄と亜鉛の反応が特に激しくなり、「やけ」が発生したり、異常に厚いめっき層になったりします。鋼中のリンは0.05%以下ならば影響はありませんが、0.07%以上になると、ケイ素と同様に鉄と亜鉛の合金反応を促進しますので注意が必要です。
めっき膜厚が異常に厚くなる現象について研究した結果では、ケイ素とリンの相乗的な効果が認められています。下図にこの結果を示します。

この図からもわかるように、ケイ素+2.5×リンの量が0.09%以下ならば、めっき膜厚は正常ですが、この範囲を超えると急激に膜厚が厚くなることがわかります。そしてSi+2.5×P の値が0.2~0.28位の範囲では再び合金反応は穏やかとなります。

3.異材および表面状態の異なったものの組合わせ

表面状態の異なったもの、厚みに極端な差のあるもの、組成の異なる鋼材、異種金属の組合わされた部材のめっきは、各々の前処理、めっき条件が異なるため均一なめっきをすることが困難になります。

4.部材の溶接

溶接継ぎ目を断続溶接とすると、めっき工程中の酸洗い時に溶接していない部分から酸が内部に浸み込み、めっき後ににじみ出して赤いさび汁となります。したがって、溶接部は必ず全周溶接としてください。例えば下図左に示すように、母屋・胴縁ピースなど、通常鉄骨造では二面しか溶接しないものも、溶融亜鉛めっき構造では四面の溶接が必要となります。
下図右に示す梁材とブレース取合いプレートのように、板厚が異なる二枚重ねの場合、重なる部分の面積は400平方センチメートル以下としてください。これは板厚差による温度分布不均一から、熱膨張あるいは収縮により、プレートが変形を起こすばかりでなく、周辺の溶接に亀裂を生じる可能性もあるからです。

プレート面積が大きい場合は、それぞれをめっきした後、ボルト接合とするか、または左図のように400平方センチメートルを超えるごとに1個所の栓溶接をすることも一方法です。

5.空気、亜鉛の流出入孔をあける

管または組立品で密閉された部分があると、めっき浴に浸せきできないだけでなく、内部に水分がある場合は、高温のめっき浴中で急激に水分が膨張し、高い圧力を生じて爆発する危険があります。また形鋼組立品も亜鉛の流出入孔をあけておかないと、部材をめっき浴にスムーズに浸せきできず、亜鉛たまりや「やけ」の原因となります。下図に穴あけの例を示します。

6.ねじ付き部材

めっきを施す部材に取付け用のボルトやナットおよびソケットなどが溶接されている場合は、ねじ部分に亜鉛がたまり、嵌合不良となるので、めっき後タッピングするか、めっき前にねじ部をマスキングするかの2つの方法があります。

(1) めっき後、余剰の亜鉛を除去する方法

小径のねじについては、タッピングによるねじさらいを行いますが、径が大きい場合は加熱して亜鉛を溶かし、ブラッシングにより除去する方法があります。

(2) めっき前のマスキング処理

ねじ部に塗料やパテを塗ってマスキングするか、ボルトあるいは仮ソケットをはめておき、めっき後取り外す方法があります。
ねじ付き部材のマスキング方法の例を図に示します。

7.部分不めっき

めっき製品は通常全表面にめっきを施していますが、高力ボルト接合面や、まためっきに溶接する場合には一部を「不めっき」処理することがあります。不めっき処理の一般的な方法は次の通りです。

(1) さびのない素材や機械加工を施したもの

石灰または耐熱材料で不めっき面をシールして溶融亜鉛と接触しないようにします。

(2) さびやスケールの厚い素材

エポキシ樹脂塗料のように耐薬品性の塗料を塗布し、酸洗処理をしてもその部分だけ除錆できないようにします。こうしておけば、部材がめっき浴に浸せきされても、不めっき処理した部分は亜鉛と接触しないので、不めっきとなります。

(3) 大型鋼材や板厚の厚い素材

橋梁や大型構築物に使用される鋼材や厚肉品は、溶融亜鉛との反応時間が長くなります。そのため部分的に塗布した塗料が炭化し、素材面がっき浴と接触することがあるので、塗料の重ね塗りや塗布後シールテープを貼るなどの処置をします。