FAQ

溶融亜鉛めっきFAQ

3.亜鉛めっきの経済性は?開く

鋼構造物の長期間防食には、溶融亜鉛めっきが経済的に最も有利な表面処理方法です。

防食費用には

初期費用・・・初めにどの位の費用がかかるのか?
維持費用・・・保守にどの位の費用がかかるのか?

の2種類があり、その合計が防食費用になります。
溶融亜鉛めっきの特徴の一つは、防食寿命が非常に長く、その期間中は維持費用を原則的に必要としないことです。
初期費用が溶融亜鉛めっきより安価な表面処理はありますが、それらの表面処理は比較的短期間に防食能力がなくなるために維持費用がかかり、合計費用では溶融亜鉛めっきより高価になります。
溶融亜鉛めっきと、同様に鋼構造物の長期間防食に使用されている塗装とを比較すると次のようになります。

一般鉄鋼製品について

溶融亜鉛めっき加工費用は、1トン単位で決められています。他方、塗装費用は塗装種類により異なり、1・単位で決められています。
そこで、溶融亜鉛めっき加工費用は鋼材肉厚が4mm、8mmおよび15mmの3種類を選んで1・当たりに換算し、塗装からは比較的多用されている2種類を選んで溶融亜鉛めっきと塗装との経済性を比較しました。

(1) 費用の比較

以前は「溶融亜鉛めっきは保守には費用がほとんどかからないが、初期費用が高い」というのが一般的な通念でしたが、最近ではその差が平均的にはほとんどなくなっています。
製品の肉厚が比較的薄い場合には、むしろ溶融亜鉛めっきの方が安価になっております。
この主な原因は人件費が年々上昇しているためです。溶融亜鉛めっきは工場で加工されるために、加工費用の中で人件費の占める割合が塗装に比べて少なく、従って溶融亜鉛めっき加工費用の上昇が比較的緩やかであるのに対し、塗装費用の上昇が大きくなっております。

(2) 維持費の比較

塗装は通常数年の周期で塗り替えを必要としますが、溶融亜鉛めっきは防食寿命が続く限りの長周期、維持費用を必要としません。溶融亜鉛めっきの方が経済的に有利であることは疑う余地はありません。

(3) 総費用の比較

溶融亜鉛めっき加工費用と塗装費用について、初期費用と塗り替え費用の例を表に示します。

 溶融亜鉛めっき(注1)塗装(注2)
A鋼材B鋼材C鋼材例1例2
初期費用(円/m21,2262,4484,5942,5733,664



費用(円/m20002,0382,584
周期5年10年
回数(回)0005(回)2(回)
小計(円/m200010,1905,168
合計費用(円/m21,2262,4484,59412,7638,832
防食能力残存価格(円/m2)(注3)-591-1,181-2,80400
差引実質経費(円/m26351,2671,79012,7638,832

溶融亜鉛めっきおよび塗装の費用は、(財)建設物価調査会編「建設物価」平成12年6月号に基づき、溶融亜鉛めっきは工場への運送費、塗装は現場管理費および一般管理費を含めて算出しました。
溶融亜鉛めっき加工費用は、鉄骨溶接体、施工規模200t、めっき規格 HDZ55の場合を想定すると、下記のようになります。

 最高地区最低地区平 均運送費加算
めっき加工費(円/t)76,50066,50071,50078,100

(注1)溶融亜鉛めっきA鋼材、B鋼材、C鋼材の肉厚をそれぞれ、4mm、8mm、15mmとし、めっき層寿命を58年、58年および77年を見込んでいます。
(注2)初期塗装仕様は

例1
下地調整:C種(ディスクサンダー)
下塗り:鉛系さび止め塗料1回
中塗り:合成樹脂調合ペイント1回
上塗り:合成樹脂調合ペイント1回

例2
下地調整:C種(ディスクサンダー)
下塗り:-
中塗り:エポキシ樹脂塗り3回
上塗り:(プライマー含む)

塗り替えはそれぞれ同一塗装仕様とし、塗り替え面積を塗装面積の半分、下地調整をケレン3種Cに変更および足場費を含むとして費用を算出しました。

(注3)防食能力残存評価額は次の計算式から求めております。

塗装の場合:類似の計算で求められますが、上記の例ではともに0となります。
これを図にして、30年間における合計直接費用を比較した例を図 6-1に示します。

この図で見られる通り、鋼材肉厚が15mmの場合には、溶融亜鉛めっきは初期費用で塗装より高価になっていますが、塗装の1~2回の塗り替えで溶融亜鉛めっきの方が合計直接費用が安価となります。
これらの塗装例よりも安価な塗装種類もありますが、そのような塗装種類では一般に塗り替え間隔がさらに短くなるので、合計費用では逆にさらに高価になることが多くなります。
防食費用低減の手段として塗装の塗り替えを理由なく遅らせたり、省略したりすると、鋼構造物が腐食されるので経済的に最も不利な手段となります。